なにかが見えてくる
おじさんの戯言 (たわごと)
おじさんも IT

おじさんは年をとってからパソコンなるものを扱いはじめた。パソコンなるものが一般に普及しだした時点で、おじさんはもうおじさんになっていたのだから仕方がない。

おじさんが最初に買ったのは、今はなきコンパック(ヒュ−レット・パッカードに吸収されてしまった)のプレサリオ2274というもので、電気屋さんを見てまわって(おじさんは自分が納得いかないと気がすまない)、性能と値段の折り合いのつくところで決めたのだ。それでも、本体(コンパック)、モニタ(三菱)、プリンタ(キャノン)合わせて、23万ほど支払った。OSはWindows98、ハードディスクのサイズは4G、メモリは64Mだった。今から考えると莫大な金額だ。それでも当時としてはお得なほうだった。

おじさんはそれに電話線をつないで56kbpsの速度でインターネットを享受し、あたかも自分が時代の先端を行くものであるかのように、これがインターネットだと得意げに家の者に話したものだ。今から考えると、クリックしてから画面が現れるまでのあの長い時間を、よくも忍耐強く画面の前に座ってじっと待っていられたものだと思う。忍耐のない若者たちには到底できない芸当だと、密かにおじさんは自負している。

おじさんの年で初めて科学技術の最先端を行く電子機器を扱うのだから、トラブルは付き物だった。機械というのは当然人間の操作する通りに動いてくれるものだと思っていたおじさんだったが、特に誤った操作はしていない、いや、特に何もしていないのに、突然そっぽを向いてしまう先端技術には閉口してしまった。

どのように機嫌を損ねてしまったのか、特に機嫌を損ねるようなことは何もしていない、ただただ前に座っているだけなのに、それが気に食わなかったのか、とにかく一旦へそを曲げてしまうと、うんともすんとも言わない。わがままでよく駄々をこねる小さな子供のようである。そういう状態をフリーズ(凍る)というらしいが、そういう場面に遭遇するとおじさんのほうが凍りついてしまうのだ。

相手は最先端技術の電子機器様である。悲しいことに、おじさんには何の落ち度もないのに、自分の落ち度であるかのように思わされてしまう。そして、最先端技術様の機嫌を直してもらうために、八方手を尽くして徹夜してしまうということも幾度かあった。どうしてここまでして機嫌を取らなければならないのかと思うこともあったが、何しろ相手は世界の最先端技術様である。おじさんが文句を言える相手ではない。格が違いすぎる。おじさんがいくら黒だと思っても、誰が見ても明らかに黒であっても、先端技術様が白だと言えば白なのである。おじさんにはそれを黒だと認めさせるような力などない。おじさんはおじさんらしく一人でぶつくさ言うのが関の山なのである。
(2007)


戻る