なにかが見えてくる
おじさんの戯言 (たわごと)
ほめる

先日、小さな子どもの暗唱大会があった。幼稚園から小学校中学年ぐらいの子どもたちが、それぞれに自分の好きな文章を暗唱して発表する。短い文章から長い文章までさまざまで、たいていは日本語の文章だが、中には外国語のものもあった。みんな上手に発表していたが、中でも小学生の男の子二人が突出していたように思う。一人はコロンブスの新大陸発見の話、もう一人はきっちょむ話であった。コロンブスの話を発表した小学校1年生には感心した。コロンブスがスペインの港を出港して、いくつもの困難を乗り越えて新大陸に到達するという話だが、少しも臆することなく堂々と発表していた。その子のように、大勢の前で動じることなく、堂々と発表している子どももいれば、少しあがってしまって、途中何度もことばが途切れてしまう子どももいた。緊張のあまり全く発表できずに、後で改めて挑戦する子どももいた。すべての子どもの発表が終わった後、幼児教育の専門家が少し話をされた。

「家で練習したことが十分発揮できた人もいれば、十分発揮できなかった人もいたでしょう。お母さん、お父さんにとって、不満の残る発表だったものもあるでしょう。でも、みんな一生懸命やりました。こんな小さな子どもたちが、こんな多くの人たちの前で発表すること自体、ものすごいことなんです。ですから、この後、お子さんがお母さん、お父さんのところに戻っていったときには、何よりもまず、『よっくがんばったね。とてもよかったよ』とほめてあげてください。そういう声かけが大事なのです。何よりもそういう声かけが子どもの伸びていく原動力になるのです。まずそういう声かけをして―抱きしめてあげればさらにいいでしょう―そのあとで、発表について具体的にどういう点がよかったか、どういう点にもう少し注意すればよかったか、などを話し合ってください。といっても、親が一方的に指摘するのではなく、子ども自身にそういう点について気づかせてください。自分で気づき認識することが大事なのです。そうすると、自分自身で今回の不十分だった点を改め、今後その教訓を生かして、さらに大きく伸びていくことができるのです」

うまくいかなかった教訓を生かして、今後につなげるからこそ、"Failure teaches success." "Failure is the way to success." "Failure is the threshold of success." などということが言えるのだとおじさんは思う。失敗の教訓を生かせなければ、失敗は失敗のままであるどころか、さらに大きな失敗へとつながっていく。失敗の教訓を生かせるような子どもになってほしい。失敗を恐れず、その教訓を生かして、善なる人間として大きく成長していってほしい。「きみたちにはできる」 おじさんは心からそう思い、切にそう願うのである。

おじさんは発表を終えた子どもたちに、がんばりをねぎらう優しい微笑を投げかけながら、もう一つ別の話を思い出していた。

それはクラフト講習会での話だった。クラフトそのものも楽しかったが、それ以上に講師の先生のお話がおじさんの心を打った。子どもと接するとき、ことばをかけるとき、子どもをほめてあげて、やる気を出させるようなことばがけをしてください、ということだった。

「普段子どもの悪いところばかりに目が行きがちだが、意識して良いところに目を向け、素直にほめてあげてほしい。どんな小さなことでもいいからほめてあげてほしい。うれしくなって、前向きになれるようなことばをかけてあげてほしい。そうすれば、自然と子どもは元気になり、やる気を出し、毎日を前向きに過ごし、自らを自らの力で伸ばしていくことになる。ことばを発する際には、口からいろんなことばが出てくる。子どもの良い点を指摘することばもあれば、悪い点を指摘することばもある。子どもをほめることばもあれば、けなすことばもある。ことばを発するというのは、口からことばを吐くわけだが、"吐"くという字からわかるように、ことばを発するときには、"口"から"+(プラス)"のことばも出れば、"−(マイナス)"のことばも出る。しかし、どうせなら"+(プラス)"のことばを多く出してほしい。そうすれば、"吐"からマイナスの要素が姿を消し、子どもに対する我々の思いが"叶"うことになる。だから、常に子どもの良いところに目を向け、ほめてあげてほしいのです」

おじさんはこのお二人のお話を噛みしめ、自分はどうかと振り返ってみる。うーん、おじさんの場合、どうも良いところより、悪いところに目が行ってしまって、良い点をほめるより、悪い点を注意するほうが多いように思う。それではいけない。しかし、どうしてもおじさんには悪い点のほうが目についてしまうのだ。何とかしなければいけないとは思うものの、もう年だし、生きている間に自分を変えるのは難しいだろう。どうかお許しください。
(2009)


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