なにかが見えてくる
おじさんの戯言 (たわごと)
13の徳目

おじさんはあまり物知りではない。しかし、知りたいという好奇心は人並みに持っている。だから本を読むと、なるほど、なるほど、と感心することが多い。先日もある本を読んでいると、ベンジャミン・フランクリン(Benjamin Franklin (1706-1790))について触れられていた。ベンジャミン・フランクリンはアメリカの政治家、著述家、科学者で、出版印刷業者として成功し、避雷針の発明や、稲妻の放電現象の証明など科学の分野をはじめ、図書館・高等教育機関(現在のペンシルベニア大学の前身フィラデルフィア・アカデミー)の創立などの文化事業にも貢献した。また、アメリカ独立に際し、大陸会議代表や独立宣言起草委員を務め、合衆国憲法制定会議にも出席した。18世紀の近代的人間像を象徴する人物で、アメリカ人の典型とも言われ、その著「フランクリン自伝」はロングセラーになっている。また、米100ドル紙幣に彼の肖像が描かれている。ちなみに、この程度のことはおじさんでも知っている。

そう言えば、100ドル札に肖像が載っていた。30年以上も前のことだが、おじさんがアメリカの大学で勉強していたとき(もちろん当時はまだおじさんではなかった)、おじさんの持っていた100ドル札を見て、ルームメートのアメリカ人が「100ドル札など見たのは初めてだ」と驚いていたのを覚えている。当時は1ドル300円ぐらいだったと思うが、そのような高額紙幣は安全のため通常持ち歩くことはなく、必要なときはクレジットカードや個人小切手で支払うことになる。おじさんはその高額紙幣を3枚も財布に入れていたのだから、今思うと物騒なことをしていたものだ。しばらくしてアメリカ人の友人から個人小切手を勧められ、おじさんも自分の小切手を持つようになり、現金はあまり持ち歩かないようになった。そういうことがあったので、100ドル札にベンジャミン・フランクリンが描かれているのは知っていた。

ところで、話を元に戻すと、その本はベンジャミン・フランクリンの13の徳目というものに触れていた。それは彼が20代になって間もない頃に考え出したもので、それを実践し、身につけることによって、自分を高めようとしたものだ。「フランクリン自伝」に記されているこの13の徳目は彼の生き方の柱になっている。

Benjamin Franklin's Thirteen Virtues
 1. TEMPERANCE Eat not to dullness; drink not to elevation.
 2. SILENCE Speak not but what may benefit others or yourself; avoid trifling conversation.
 3. ORDER Let all your things have their places; let each part of your business have its time.
 4. RESOLUTION Resolve to perform what you ought; perform without fail what you resolve.
 5. FRUGALITY Make no expense but to do good to others or yourself; i.e., waste nothing.
 6. INDUSTRY Lose no time; be always employ'd in something useful; cut off all unnecessary actions.
 7. SINCERITY Use no hurtful deceit; think innocently and justly, and, if you speak, speak accordingly.
 8. JUSTICE Wrong none by doing injuries, or omitting the benefits that are your duty.
 9. MODERATION Avoid extremes; forbear resenting injuries so much as you think they deserve.
10. CLEANLINESS Tolerate no uncleanliness in body, cloaths, or habitation.
11. TRANQUILLITY Be not disturbed at trifles, or at accidents common or unavoidable.
12. CHASTITY Rarely use venery but for health or offspring, never to dullness, weakness, or the injury of your own or another's peace or reputation.
13. HUMILITY Imitate Jesus and Socrates.

ベンジャミン・フランクリンの13の徳目
 1. 節制 頭が鈍るほど食べない。酔って浮かれだすほど飲まない。
 2. 沈黙 他人または自分の利益にならないことはしゃべらない。つまらぬ話は避ける。
 3. 規律 自分の持ち物はすべて置くべき場所を決めておく。自分の仕事はそれぞれ時間を決めてする。
 4. 決断 するべきことを実行する決心をする。決心したことは必ず実行する。
 5. 倹約 他人または自分のためにならないことにお金を使わない。すなわち、浪費しない。
 6. 勤勉 時間を無駄にしない。常に有益な仕事に従事する。必要のない行為はすべて切り捨てる。
 7. 誠実 人をだまして傷つけるようなことはしない。悪意を持たず、公正に考え、話すときも同様にする。
 8. 正義 傷つけたり、与えるべきものを与えなかったりして、人を不当に扱わない。
 9. 中庸 極端を避ける。激怒して当然のような侮辱を受けても、一歩手前でこらえる。
10. 清潔 身体、衣服、住まいは清潔に保つ。
11. 冷静 些細なこと、よくあることや避けられないことで心を乱さない。
12. 純潔 性の営みは健康または子孫のためにのみ行ない、決してそれにふけって頭の働きを鈍らせたり、身体を衰弱させたり、自分自身または他人の平和な生活や評判を損なったりしない。
13. 謙遜 イエスやソクラテスを見習う。

おじさんもひとつひとつ少しずつでも実践し、自分を高めたいと思う。そこで、おじさんなりに各項目を、おじさんにとってどうなのか、簡単に検証してみた。

1 節制
若い頃はよく食べた。食べ過ぎて、食後しばらくは頭がぼうっとしている、ということがよくあった。しかし、この年になると、さすがに食が細り、そういうことはなくなったが、これからも気をつけたいと思う。今思えば、それによって若い頃にどれだけ時間を無駄にしたことか。ところで、酒については大丈夫だ。酒は若い頃からほとんど飲まない。そういう体質のようだ。
2 沈黙
これは実践できていると思う。逆に、もう少ししゃべった方が人付き合いがうまくいくのではないかと思うぐらいである。総じて、無駄口をたたかないタイプである。気の許せる仲間とはつまらない話をして、大いに無駄口をたたくという側面はあるのはあるが......
3 規律
これは全然駄目だ。これから真剣に心がけなければならない。まず物の整理が下手である。物を失くすことはなく、どこに何があるかは大体把握しているが、整然と所定の場所におさめることが苦手である。物の整理が下手だということは、頭の中の整理も下手で、学習したことが頭の中に整然とおさまっていない。また、論理的な、整然とした思考も苦手である。少し話がそれたようだが、実はつながっているように思う。
4 決断
決断が遅いのが気になる。即断ができない。色々なことを色々な角度から熟考してから決断するので、決断に時間がかかる。じっくりと時間をかけて考え、いい加減な決断はしない。そのため時間はかかるが、それは必要な時間であり、いったん決断すると、必ず最後までやり遂げる。途中で投げ出すことはまずない......と思う。
5 倹約
これは大丈夫だ。昔から無駄使いはしない。お金を使う前に、本当に必要なことなのかどうか、もう一度よく考え、慎重に使う癖がついている。本当に他人または自分のためになる、生きたお金の使い方をするようにしている。無駄なお金、死に金は使わない。おじさんはそういう人だ。
6 勤勉
勤勉な方だと思うが、もっともっと勤勉に徹するよう努力しなければならない。まだまだ有効に期間を使っていない部分が多々ある。無駄に時間を使っていることも多い。年とともに集中力が衰え、何もせずぼうっとしている時間が増えたように思うが、これは無駄な時間なのか、必要な時間なのか、どうなんだろう。
7 誠実
誠実だけが取り柄のような人間だ。「正直者は損をする」と俗に言うが、それほどの馬鹿正直者である。もちろん、おじさんは損だとも馬鹿だとも思っていないし、正直であることが損だとか馬鹿だとかいうことは決してない。子供の頃からそうだから、これからも変わらないだろう。何事にも常に誠実な姿勢を崩さないよう、これからも気をつけたいと思う。
8 正義
これに関しても、昔から正義感の強い人間だ。不正を忌み嫌い、常に公正を追求する態度は今も昔も変わらない。これからも変わらないよう気をつけていきたい。ちなみに、正義が必ず勝つ、勧善懲悪のドラマや映画は大好きである。最後に正義が勝ったときなどには、それまでもやもやしていたものが一気に吹っ飛び、スカッとする。また、時には感無量になって、目頭が熱くなることさえある。ちょっと話がずれたかもしれない。
9 中庸
これに関しては、まだまだ修行が足りない。感情的になり、時に言動が極端に走り、爆発することもある。後で嫌な気分になるが、我慢すれば、もっと抑うつされた気分になり、胃がキューッと差し込むように痛むのだ。この年になっても、まだまだ人間ができていないようだ。
10 清潔
概して、きれい好きな方だが、無頓着な面もある。手洗いは頻繁にするし、毎晩必ず風呂に入らないと気持ちが悪くて寝れないし、身だしなみも人並みだし、そういう意味ではいつも清潔にしている。しかし、物の整理が下手で、机の上や部屋が雑然としている。と言っても、どこに何があるかが大体わかっているので、雑然としていてもさほど気にはならないのだが......
11 冷静
些細なことには大体平静を保ち、心を乱さないことができるが、予期せぬ事態が起こったりすると、少し動揺するかもしれない。そして、それに対処するのに少し時間がかかるかもしれないが、冷静に対処することはできると思う。時におじさんが冷静さを失い、感情を爆発させることがある。それは人の道に外れるような言動を見聞きしたときである。その時は容赦はない。
12 純潔
これにコメントするまでもなく、おじさんはそういう人である。
13 謙遜
イエスやソクラテスをを見習っているかどうかはよくわからないが、一般的な意味での謙遜、謙虚には当てはまると思う。おじさんは決して前に出ない。前に出て自分を目立たせようとはしない。おごったような言動はしない。自分の手柄を言いふらしたり、自分の能力をひけらかすようなことはしない。総じて謙虚な人である。昔から「能ある鷹は爪を隠す」ということばが好きであるが、それを地で行っている、とおじさんは自分で自分のことを勝手にそう思っている。

このように、おじさんにはまだまだできていない部分が多々ある。できていない部分を一度にすべてということになるとなかなかできないから、ベンジャミン・フランクリンが言うように、一度にすべてを実践し、身につけようと無理をせず、ひとつひとつ着実に身につけていきたいと思う。すぐに実践できなくても、実践しようとする努力が大事なのだ。
(2010)


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